東京都台東区
ランドスケープ=株式会社翔設計、若生謙二、渡辺美緒デザイン事務所合同会社、 株式会社戸田芳樹風景計画
建築設計=株式会社翔設計
Ueno Zoo Panda Forest
Taito-ku, Tokyo
Landscape design by Sho-sekkei, Kenji Wako, Mio Watanabe Design Office, Yoshiki Toda Landscape&Architect
Architecture design by Sho-sekkei
Text by Shinsuke Yamak(i Sho-sekkei), Kenji Wako
Photograph by Sho-sekkei, Kenji Wako*, ss**, IT imaging***
生息環境展示の実現
上野動物園「パンダのもり」は、旧施設の老 朽化や動物福祉に配慮した飼育への対応など に伴い、西園不忍池近くの敷地に新たに設け られた展示施設である。
平坦地に起伏と丘を造成し、多様な植栽や 岩場を施し、背景の斜面樹林を借景とするこ とで、ジャイアントパンダが生息する中国四 川省等の山岳部のランドスケープを創出して いる。観客はジャイアントパンダがその自然環境で暮らす姿をランドスケープとして眺め ることを可能とし、生息環境の景観形成とそ こでの行動を誘発する生息環境展示を実現し ている。
ゾーンの入口は生息地である四川省の植生 と竹林によって生息地への入り込み感を演出 し、ゆるやかに曲がる園路につながっていき、 先の様子が見えない湾曲した園路によって、 臨場感と出会いによる感動を演出する。園路を進むと、「足跡」、「糞」、「爪痕が残る木」の 造形サインを発見し、その痕跡から生息環境 でのジャイアントパンダの生態を体感する。 更に、同じ生息域に暮らすレッサーパンダや キジ類に出会い、期待感を高めていく。園路 を曲がった先に広がるせりあがった岩場の中 に植栽や倒木を配した、起伏に富んだ風景の 中で、観客はジャイアントパンダに遭遇する。
借景の活用による深山のランドスケープ
展示の場では、動物側の地盤を奥に向かっ てゆるやかに上げていき、岩場や倒木を配し て起伏に富んだ場と樹木や擬木により、樹上 環境をつくりだしている。奥には森が広がり、 一体的に見ることができるが、これは計画地 の敷地外に広がる東園の斜面樹林であり、借 景として活用することで深山のランドスケー プを創出している。森を望む傾斜地に岩場を 配して起伏に富んだ場をつくり出し、生息環 境の創出によって動物の行動を誘発し、ジャ イアントパンダが山地で暮らす様子を観察することができる。動物側の地盤高は観客側よ り60cm上げることで視線高を近づけ、見上げ による観察を可能としている。見上げは動物を 優位の位置に配することで畏敬の念を感じさ せる視角であり、動物にとってもストレスを減 じる動物福祉の役割がある位置関係としてい る。動物側に広がる傾斜地は、奥に配されてい る寝室の存在を遮蔽して景の役割を果たし、 敷地周辺の高層ビルには極力視線を向けない ような動線とし、遮蔽のための高木植栽も施 している。
景観に配慮した植栽計画
植栽は、遮蔽植栽と景観植栽に大別される。 遮蔽植栽では、入口エリアに滞留する観客の 姿を屋外展示1・2から遮蔽するという役割の ためにモチノキ、シラカシ等の常緑広葉樹を 配しており、また、南側の不忍池の園路を歩 く観客の姿や北側にそびえるビルを遮蔽する という役割のためにスダジイ、クスノキ等を 配している。景観植栽では、入口エリアには モウソウチク、ホウライチク等の竹類とスダ ジイなどの常緑樹、カムラオザサ等を配して いる。竹林の奥には東園の斜面樹林である背の高い常緑樹林を借景として活用している。 屋外展示2のエリアには景をつくるとともに ジャイアントパンダに緑陰を提供するために、 ムクノキやエノキ等の落葉樹を配している。 また、スダジイやウバメガシ等の常緑樹で森 林への入り込み感を演出し、常緑と落葉の混 交林である四川省の森にわけ入ったようにイ タヤカエデ等の落葉樹も配している。屋外展 示3では、エノキ、コナラ等の落葉樹ととも に、シラビソ等の針葉樹を配して、四川省で も標高の高い山岳地帯に来たことを表現しクサソテツや、オニヤブソテツ、ササ類などの 地被も岩の間に配して臨場感を演出してい る。傾斜地であるジャイアントパンダの屋外 展示では、地被としてノシバを中心にシダ類 の他、シラン、シャガなどを配している。
屋内展示では、背景に森林内の景と山岳地 の景を写真で張り詰め、生息地のランドス ケープを想起させている。建築物は起伏で遮 蔽すると共に、視界に入るものはランドス ケープと一体化した意匠としている。
3 種類の展示手法
ジャイアントパンダと観客の間は、強化ガラスで間近に観察するこ とができる場と塀を用いて直接動物を観察できる場を取り入れて いる。ガラスによる展示は2種類を計画している。
境界壁1
ガラスによる展示
境界壁1は、強化ガラスを縦使いとした三辺固 定の納まりとし、ガラス上部にフレームを持た ない構造としていることから、展示場内部の樹…